十三回忌2009/04/11 21:31

単車で法事に行く奴
旧い友達の十三回忌に出席してきた。
 
彼とは、小学生の頃に知り合った。
僕が余所から転校してきて、最初に友達になってくれたのが彼だった。
 
すぐに意気投合して、ずいぶん良く遊んだ。
彼は漫画が得意で、僕も教えてもらって一緒に描いた。
しかし、中学の後半に入ってから疎遠になり、
高校に入ってからは全く会わなくなってしまった。
別に特別な話じゃない。誰にでも思い当たる節が一つや二つはあると思う。
そういうものなんだ、たぶん。
子供の頃の友達って、後ろ暗い記憶を共有しているせいか、
妙に鬱陶しくなることがある。
 
僕らが再びつるむようになったのは、
同窓会がきっかけだった。
お互い、バイクに乗っていることで話が合った。
 
僕はその時既に社会人だったし、
彼は一度入学した大学を編入して、美大で造形を学んでいたから、
それほど頻繁に会っていた訳ではない。
今思い返すと、それで良かったと思う。
僕らは似ているところも沢山あったけれど、
嗜好の向きは全く違っていて、互いにむかつくこともかなりあったからだ。
 
十代の頃、鬱陶しかった関係が、昔の仲間に戻った感じだった。
僕らはすごく打ち解けて話すことができた。
僕らは心おきなく喧嘩することができた。
 
やがて僕がそんな感じを共有できる相手は、ほとんど彼一人になっていた。
 

 
彼は刀乗りだった。
刀に乗っている時に不慮の事故で亡くなった。
 
彼の死をきっかけに、僕はバイクへの興味を失った。
走ることは既に愉しくなくなっていた。
正直、バイクはもういいと思った。
でも、何かが引っ掛かって僕にバイクを降りることを躊躇わせた。
 
もし逆に僕がバイクで死んで、
奴がバイクを降りたとしたら、どうだろう。
 
 
僕はそんなの嫌だ。絶対にだ。
 
 
シラけた自分を誤魔化すために、僕は彼と同じバイクに乗ることにした。
我ながらウエットで情けない理由だと思う。
人生に「たられば」はないが、彼が生きていたら、
僕のバイクライフは今とずいぶん違うものになっていた筈だ。
まさか僕が刀乗りになるなんて。
それも10年以上も乗り続けることになるなんてね。
 
彼が「葱、結構ヤルジャン」と言ってくれるような、
そんな刀乗りに、僕はいつかなりたくて走っている。
 
そんな日が来るかなんてわからないし、
ずっと来ないのかもしれないけれど。